糖質依存症は、なぜ増えたのか?

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甘い物には、苦痛をやわらげる効能がある

 

そのため人類は、苦痛を感じると、甘いものを食べたり飲んだりして、痛みをやわらげようとしてきた。

 

漢方薬にもよく「甘草(かんぞう)」という甘い成分が入っているが、甘みは痛みを緩和し、食欲を増すのだ。

 

この甘みの代表が「砂糖」だというわけだが、砂糖を一般市民が楽しめるようになったのは、ここ100年くらいの間のことだ。

 

というのも原料のサトウキビを栽培できるのは日照量と降水量に恵まれた亜熱帯の地域で、地中海の島やキューバ、インド洋の島や沖縄・台湾など、非常に限られた地域であったからだ。

 

なのでひとたび戦争でも起これば、砂糖の価格は急騰し、穀物同様に統制物資となった。

 

そのため各国は砂糖の代替品を開発するようになり、たとえばナポレオンの大陸封鎖で砂糖不足が起こったときには、甜菜(砂糖用ビート;サトウダイコン)の栽培がヨーロッパで広まり、新しい砂糖(甜菜糖)の原料の一つとなった。

 

また1962年、キューバが自国内のアメリカ資産を接収し、砂糖をアメリカではなくソ連に輸出することにした後には、人工甘味料の開発が盛んになったり、アメリカ統治下にあった沖縄でサトウキビ栽培が広まった。

 

当時の砂糖は国際戦略商品であり、砂糖業界は大きな利益を生む産業で、大きな影響力を持っていた。

 

ところが1970年代に日本の研究機関で「異性化糖」が開発されたことで状況が一変した。

 

異性化糖(いせいかとう)というのは、デンプンを酵素で分解して作る甘味料だが、デンプンさえあれば大量に作ることができたのだ。

 

そしてこれが清涼飲料水にピッタリの甘味料だったため、アメリカではトウモロコシを大量生産して、コーラやソフトドリンクの甘味料を異性化糖に替えた。

 

その結果、甘いドリンクをガブガブ飲めるようになり、コーラとピザでブクブク太った肥満が問題になり出したわけだね。

 


異性化糖は、肥満につながりやすい糖

1960年代、サトウキビの大生産地のキューバが、アメリカと対立して砂糖の輸出先をアメリカからソ連に切り替えた。

 

そのため砂糖の国際価格が急騰し、サトウキビの栽培が盛んになり、人工甘味料の開発も進められた。

 

沖縄でサトウキビ栽培が広まったのも、実はキューバ危機の後で、ここ半世紀のことだ。

 

そして70年代に日本でデンプンから作る「異性化糖」という甘味料が開発され、これが一気にアメリカで広まった。

 

異性化糖とは、デンプンをアミラーゼという酵素で分解してブドウ糖を作り、さらにそのブドウ糖の一部をイソメラーゼ酵素で果糖に変えたものだ。

 

つまり異性化糖とはブドウ糖と果糖の混合物なのだが、アメリカではトウモロコシのデンプンを原料として作るのでHFCS(high-fructose corn syrup;高果糖コーンシロップ)とも呼ばれる。

 

ブドウ糖も果糖も天然の物質であるし、材料もトウモロコシのデンプンだったため、すぐに認可されてコーラやソフトドリンク、アイスクリームなどに使われ始めたのだ。

 

もちろん日本でも「ブドウ糖果糖液糖」や「果糖ブドウ糖液糖」という名前で、コーラなどのドリンクに使われるようになった。

 

因みに、ブドウ糖果糖液糖は果糖の割合が50%未満、果糖ブドウ糖液糖は、果糖が50%以上の甘味料を指す。

 

異性化糖は、40度以上の温度では甘さが弱まるため、冷たいドリンクの甘味料としてしか使えないという欠点があった。

 

しかしデンプンを原料にして作るので大量生産でき、コストも砂糖の何割も安く作れるので、今やアメリカの糖類の半分ものシェアを占めている。

 

ところが異性化糖に含まれる「果糖」と言う奴が曲者で、低温では砂糖の1.5倍も甘いくせに満足感が少ない。

 

砂糖より甘みが口に残らないし、おまけに安いから、炭酸飲料は、いくらでもガブ飲みできるというわけだ。

 

しかし果糖はブドウ糖より反応性が高く、体内のタンパク質と糖化反応を起こし、骨や血管などを弱くしてしまう。

 

またAGES(エイジズ)という物質を作り、シミやシワなどの老化現象を引き起こしてしまう。

 

さらに果糖は肝臓ですぐに中性脂肪になるので、肥満の原因になって、砂糖より始末に負えない。

 



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