抽象的な概念がわからない子供の指導法
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九歳の峠とか10歳の壁というのは、小学4年生以降の勉強が、うまくいかないという現象だ。
学校では、小学校4年生くらいから、様々な抽象的な概念を学ぶ。
分数や小数などの端数は4年生からだし、面積だとか体積だとか、速さだとか濃さ、単位あたりの数・人口密度なども少しずつ学び始める。
なぜ4年生から抽象概念を学ぶかというと、実は10歳になるまでは理解できないからだ。
子供の脳は約10年かけて成長し、大人の脳になる。
なので小学校低学年くらいまでは、時間の概念もわからないし、仮の話も殆ど理解することができない。
そこで多くの子供の脳が充分成長する10歳になってから、抽象的な概念を教えるカリキュラムになっているわけだが、聴覚障害や発達障害、学習障害などの気があると、小6になっても理解できていない場合もある。
またそういう成長障害の気が無くても、勉強しなければ覚えない。
というのも面積や体積、速さや濃さなどの概念は、別に使わなくても生きていけるからね。
こういう抽象的な概念の理解ができていない子供を指導する場合、理解させるよう努力はするが、これがもう絶望的に難しい。
仕方が無いので、試験対策としては基本問題を棒暗記させるしか無くなる。
つまり問題と解き方をワンセットにして丸覚えさせ、とにかく入試の時だけ点数が取れるように詰め込むわけだ。
ところが棒暗記だから、ちょっとひねった問題が出ると、解き方がわからず、結局何にもできなくなる。
棒暗記の限界
棒暗記(ぼうあんき)とは、意味がわからないまま丸覚えすることを言う。
たとえば密教などに伝わる真言・マントラは、実は意味が無い言葉だったりする。
不動明王の真言などは、「のーまく・さーまんだー・ばーざらだん・せんだー」と続くが、ただインドの神様の名前を唱え、神様をたたえる文言が並んでいるだけだという。
真言やマントラは、音の響きが重要であり、唱えている内容自体に意味が無いのだという。
こういう場合は、棒暗記でも構わない。
というのも目的は「そのまま唱えること」だから。
しかし受験勉強で棒暗記は、めったに役に立たない。
というのも覚えたパターンそのままの問題が出たときしか役に立たないからだ。
ちょっとひねった問題や、文章がちょっと違うだけで、何が何だかよくわからなくなってしまう。
それでも偏差値40未満の受験生には、こういう棒暗記をやらせるしか方法は無い。
基本問題・一行問題ができない子供は、スラスラできるようになるまで、ひたすらやるしか無いのだ。
しかし棒暗記は意味のわからないことを覚えるので、いくら繰り返しても、どんどん忘れていく。
1ヶ月前にやった全く同じ問題をまたやっても、ほぼ同じ点数しか取れなかったりする。
5年生向けの受験教材を使っていても、こういう風にほとんど進歩が見られない。
言ってみれば棒暗記というのは、ザルで水をすくうような作業なんだけれど、しかしザルで水をすくい続けないといけないのが、偏差値40くらいの生徒の受験指導・入試対策だ。